紺碧の地図
◆居場所
―――私は、ゼンの何を知っていたんだろう。
「…これが、俺の全てだよ」
静かに語り終えたゼンを見て、そう思った。
私が想像もできないくらい、残酷な過去が…ゼンにはあった。
私なんかよりずっと、ゼンは辛い想いをしてきたのに。
「………」
「…何で、あんたが泣くの」
呆れたようにため息をつくゼンの顔が、どこか優しくて。
より一層、涙がとまらなくなる。
「だって…だってゼン…」
「…何」
「だって…!」
「…それしか言えないの、あんた」
小さく笑みを零したゼンは、今何を思ってるんだろう。
私がゼンにかけられる言葉は、きっとない。
何も言わずに嗚咽を呑み込む私の頭を、ゼンは優しく撫でてくれた。
「…本当、他人のことばっかり考えるね」
…そんなの、ゼンも同じだよ。