紺碧の地図
◆偶然という名の必然
「…じゃあ、出航しよう」
ゼンの一言で、錨が上がる。
ゆっくりと動き始める船の上で、みんな浮かない顔をしていた。
"ラー"の衝撃を受けて、失われた命。
…リジェの命を、ここに置いていく。
「…ねぇ、ゼン。やっぱりお墓つくってあげた方が…」
「…いや、これでいいんだ」
リジェは小さな箱に入れられ、このあと海に沈む。
その弔いの仕方が納得できない私を見て、ゼンは静かに言った。
「…俺たちは、海で生き、海で死ぬんだ。だから還る場所は、海でいい」
私が何も言えずにいると、ゼンは箱を…リジェを、海へ落とした。
沈んでいく命を、私は唇を噛みしめて見届けた。
徐々にリジェから遠ざかるこの船に、少しの苛立ちを感じる。
でもこれが…仲間と別れるということ。
「…ありがとう…リジェ」
私がリジェに送る言葉は、ごめんねじゃなくて、ありがとう。