紺碧の地図

大きな水しぶきが、辺りに飛び散る。


久しぶりの海に包まれる感覚に、思わず身震いした。


同時に、忘れかけていた感覚も取り戻す。


「………けほっ」


海面に上がると、口の中に入った海水を吐き出す。


みんなの驚いた顔が、滴る水滴の隙間から見えた。



ゆっくりと、地面に手をついて海から上がる。


私の姿に気づいたニーナが、悲鳴に近い声を上げた。


「ちょっ…、ララ…!!」


本来、人間にあるべき二本の足が、今の私にはない。


海水に全身が入ることによって、私は本来の人魚の姿を取り戻した。


「…これでも思い出さない!?」


無表情で私を見ているロジーに向かって、力の限り叫ぶ。


―――どうにかして、思い出して欲しくて。


「私…人魚だよ!ララだよ!?」


この言葉に反応を示したのは、ロジーじゃなくてゼンだった。


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