紺碧の地図

険しい表情をしたゼンが、早足で私に近づいて来る。


「ゼ…」


ふわ、と温かい空気に包まれる。


ゼンの上着が、私の体を覆っていた。


「…ゼン、上着濡れちゃうよ」


「…構わない」


「ダメだよ…これじゃあ、ロジーに私が人魚だってわかってもらえない」


「…そんなこと、今は関係ないだろ」


「そんなことって…!」


ゼンの言い方にカチンときて、言い返そうと口を開いたけど。


…ゼンが、あまりにも苦しそうな顔をしてたから。


次の言葉が、出てこなかった。


「…他の誰かに見られてない保証はない」


ゼンがゆっくりと紡ぐ言葉の意味を、


「…この街に、他の海賊がいない保証もない」


苦しそうに歪んだ表情の意味を、


「―――誰かに狙われたら、どうするんだ」


…今、理解した。


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