紺碧の地図
◆太陽の恵み
・ゼンside・
水の都リティラを出航してから、一週間以上が経った。
それなのにまだ、一向に新しい土地が見えてくる気配がない。
…否、幸いなことに、と言った方が正しいかもしれない。
「う―――――…」
何とも言えない呻き声を上げたのは、レキ。
レキは椅子に逆向きに座り、背もたれの上に顎を乗せていた。
そして頻繁に「うー」やら「あー」という呻き声を上げている。
俺は目線を横にずらし、スープを飲んでいるニーナを見た。
いつもならニーナの鋭い言葉が飛んでくるはずなのに、ニーナは黙りを決め込んでいた。
スプーンからポタポタと零れ落ちるスープに、ニーナは気づいていないようだった。
「………」
俺は大きくため息をつく。
けれどそのため息は、誰の耳にも届かなかった。
今や、船員の誰もが気力を失っていた。
食堂を取り巻く空気は、明らかに淀んでいる。
…その原因は、聞くまでもない。
俺はスプーンを、わざと音を立てて皿の上に置いた。