我がままな王子



「佐々木先輩!」

翌朝、いつものようにご主人様の
カバン持ちの為、いそいそと校門
に向かっていた私を誰かが呼び止
めた。


黒川とは家がまったく反対方向の
為、校門で待ち合わせるのが日課
になっている。


「手紙読んでもらえましたか?
池上です」


「…ああ!」

まずい。
読むのすっかり忘れてた。

目の前でにこにこして立ってる、
真面目そうな後輩を見て、内心焦
った。


「え、えーと…手紙どうもありが
とう…」

とか、おかしな返事でやり過ごそ
うとする私。


「それで、お返事いただけたらな
ぁって思いまして」


返事?
うぁ~マズイよ。
読んでない事がバレてしまう!


「ええっと…」

目が泳いだ。
ここに智香でもいてくれれば、
なんとかごまかせるのに。



< 20 / 38 >

この作品をシェア

pagetop