我がままな王子
「佐々木先輩!」
翌朝、いつものようにご主人様の
カバン持ちの為、いそいそと校門
に向かっていた私を誰かが呼び止
めた。
黒川とは家がまったく反対方向の
為、校門で待ち合わせるのが日課
になっている。
「手紙読んでもらえましたか?
池上です」
「…ああ!」
まずい。
読むのすっかり忘れてた。
目の前でにこにこして立ってる、
真面目そうな後輩を見て、内心焦
った。
「え、えーと…手紙どうもありが
とう…」
とか、おかしな返事でやり過ごそ
うとする私。
「それで、お返事いただけたらな
ぁって思いまして」
返事?
うぁ~マズイよ。
読んでない事がバレてしまう!
「ええっと…」
目が泳いだ。
ここに智香でもいてくれれば、
なんとかごまかせるのに。