我がままな王子
…今日もカバン持ちだよね…?
ほとんど面識のない後輩の前で、
カバン持ちは情けないけど、仕方
ないよね…。
「お、おはよ」
無表情で立ってる黒川に軽く挨拶
してみた。
…けど、無視。
それどころか、私なんか見えない
ような素振りでさっさと行ってし
まった。
ズキッ!
それはまるで、胸の真ん中にガラ
スが刺さったみたいだった。
キュウウと痛くなって、思わず涙
が出た。
「先輩?」
…なんで涙が出るんだろう?
なんで胸が痛くなるの…?
「ご、ごめんね…ちょっと急ぐか
ら…」
それだけ言うのがやっとだった。
涙でにじむ校庭を横切り、私は
教室へは行かずトイレへと向かっ
た。
こんな顔で教室に入りたくない
…。