我がままな王子


「王子とさ…話し合ってみれば
?」

「いいよ、もう」

「なんで?すれ違ったままじゃ悲
しくない?」

「悲しいけど…仕方ないよ、無視
されたし」

「えっ!王子が無視したの?」

「うん…」

「ああ、もう!」

グイッと智香が私の手を引っぱっ
た。


「智香?」

そのままズンズンとトイレを出て
私の手を引っ張ったまま教室へ
…。


「ちょっと、智香!」

「話し合ってみなって!」

こんな泣きはらした顔で、あい
つに会いたくなんかない。

きっとまた無視するに決まって
る。


教室にイヤイヤ入ると、黒川の席
はもぬけのからだった。

「あれ、王子は?」

「図書室じゃね?」

黒川の席の隣の、西村が言った。


2時間目が始まってる頃なのに、
先生がいなくて、黒板には
『各自自習』の文字が。


「なるほど、図書室で『自習』
ね」

「もういいよ、智香」

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