我がままな王子


私の声を無視して、智香は私を引
きずるように図書室へと向かった
…。


図書室へと近づいていくにつれ、
私の心臓はドキドキと跳ね上が
る。

お願い、今はここにいないで…。
話す気力なんてない。



「失礼しまーーす」

智香は勢いよく図書室のドアを開
ける。

よかった…中には誰もいない。


「ほら、誰もいないよ。教室に帰
ろうよ」

「奥にいるかも」

「いないってば…」


智香は私を入口に残し、奥にどん
どん入って行った。


「2年3組の、黒川貴也君います
かー」


智香って、こんなに行動力ある子
だったっけ…?


いつも私の話をうんうんと聞いて
くれて、自分の話はあんまりしな
い大人しい子だと思ってた。


中学の時は、男子にからかわれて
も言い返せない智香の代わりに、
私がけんかしたりした。


智香ありがとうね。

知らない間に、私ってずいぶんあ
なたに助けられてたんだな…。


「いたよ、由比」


智香が入口まで戻ってそう言った
時、私の心臓の鼓動は全身をかけ
めぐっていた。


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