我がままな王子
■ 障害
一番奥の、仕切りのある机に
たくさんの本を置いて、黒川は一
生懸命何かを書いてる。
ああ、ドキドキする…。
ここまで来て引き返したい気分に
駆られた。
でも…智香がここまで協力してく
れたんだ。
ちゃんと話し合う!
私は深呼吸の後、よしっ、と気合
を入れ黒川に声をかける。
「あの…さ」
そういえば、この場面前にもあっ
たよね。
あの時は無視されて腹が立ったけ
ど今は凄く怖い。
「……」
やっぱり無視かぁ…。
あの時よりもさらに手痛い仕打ち
…。
ヤバイ…また泣けてきそう。
だめだ、やっぱり無理。
「佐々木?」
引き返そうとした所で、そう呼ば
れた。
初めて、名前を…。