我がままな王子
本から顔を上げた黒川の耳には
ヘッドホンが。
あ…だから聞こえてなかったの?
無視されたんじゃなかったんだね
…。
「授業さぼってどこうろついてた
んだ、不良」
それは、いつもの黒川だった。
いつも私に毒づいてる、王子みた
いな黒川の憎らしい顔。
でも今は…それがすごく愛おし
い。
「お前がいないから、本探すのに
も手間取っ…」
この時、もう自分の気持ちを押
さえきれなかった。
今でもこの事を思うと、もの凄く
恥ずかしいのだけど、私は黒川の
…ふんぞり返ってイスに座ってる
その体を…包み込むように抱きし
めてた。
「なっっっっ…」
ガタン、とイスが後ずさりした。
後ずさりし過ぎてイスごと倒れそ
うになるのを、私は必死で抱きし
めた。
「お前っ…」