我がままな王子


「話しを聞いて」


黒川はひどく狼狽してた。


抱きしめてるから、照れてるのか
嫌がってるのか顔が見えない。

イヤだったら振りほどくよね…?

お願い、このまま抱きしめさせて
…。


「あ、あのな…」

黒川は私の腕の中で力を抜いた。


「何も言わずに聞いて」

ふわっ、と黒川がつけてるだろう
コロンの香りと汗の匂いがした。

もしかして緊張してる…?


「あのね、今朝私の事無視したよ
ね」

「……」

私は彼を抱きしめたまま、話しを
続けた。


「それが…すごく悲しかったの
…いつもみたいに、カバン持てっ
て言われなかったから」

黒川はため息をついたみたいだっ
た。



< 29 / 38 >

この作品をシェア

pagetop