我がままな王子
「話しを聞いて」
黒川はひどく狼狽してた。
抱きしめてるから、照れてるのか
嫌がってるのか顔が見えない。
イヤだったら振りほどくよね…?
お願い、このまま抱きしめさせて
…。
「あ、あのな…」
黒川は私の腕の中で力を抜いた。
「何も言わずに聞いて」
ふわっ、と黒川がつけてるだろう
コロンの香りと汗の匂いがした。
もしかして緊張してる…?
「あのね、今朝私の事無視したよ
ね」
「……」
私は彼を抱きしめたまま、話しを
続けた。
「それが…すごく悲しかったの
…いつもみたいに、カバン持てっ
て言われなかったから」
黒川はため息をついたみたいだっ
た。