我がままな王子


ガラガラッと、図書室のドアが勢
いよく開いて、あろう事か池上君
が顔を見せた。


「あれーーー?佐々木先輩!」

にこにこ顔でこっちにやってくる
…。


この雰囲気、察して欲しいのに
まさにKY…。


「佐々木先輩もここにいたんです
か?なんか運命を感じますね」

運命なんか感じないから、二人き
りにしてよ~~!!

と言えたらどんなに楽だろうね
…。


黒川君はと言うと、ヘッドホンを
再び装着して、本に没頭してい
た。

もう完全に近寄るなオーラ全開。


せっかくの告白ムードだったのに
ーーーーー!!


「先生に、次の授業で使う本を探
すように頼まれたんですけど…」

そんな私の気持ちを知らず、池上
君は能天気に話しかけてくる。

「でも佐々木先輩を見たら、そん
なのどうでも良くなっちゃいました」

「あはは…」

…もう笑うしかなかった。


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