【短】6秒-ロクビョウ-
1ヶ月を過ぎた頃、賢悟の少ない貯金は底をついた。
相変わらず賢悟は、いつも部屋着のまま私を迎える。
このままでは来月は、私の収入だけで生活する事になる。
『大丈夫』と言い聞かせても、不安はなくなる事はなく
大きくなっていくばかりだった。
『ねえ、就職の方はどう?』
横になりテレビを見る賢悟に、問いかける。
賢悟はテレビに目線を向けたまま
「頑張ってる。」
と言った。
賢悟の言葉聞き、クローゼットにかけられた、スーツに目をやる。
シワひとつない。
黒のスーツ。
横にかけてある、5枚あるYシャツにも
シワはなかった。