月影

慟哭と追憶

「レナ、もうすぐ誕生日だね。」


「そうだねぇ。」


「欲しいモンあるー?」


「ビル・ゲイツの総資産。」


知らないよ、と葵に一蹴されてしまう。


少し時が経ったからか、彼女は幾分元気になった印象で、仕事に生きるべくナンバーワンを目指すのだと、酔っ払って先日、高らかに宣言していた。


まぁ、あたしは相変わらず、人生の目標すらも見えないのだけれど。



「じゃあ、ビール券ちょうだい。」


「アンタねぇ。
夢がない以前に、それって人としてどうなの?」


だって本当に、欲しい物なんてないんだもん。


横ではあたし達の会話を聞いていたサキちゃんが、ケラケラと笑っている。


ため息混じりにパタンとロッカーの扉を閉め、鏡の前に腰を降ろした。



「でもレナさん、本当に欲しい物思い浮かばないんですか?」


同じく着替えを終えたサキちゃんも、あたしの隣へと腰を降ろす。


アイズは女の子の数もそこまで多い方じゃないので、派閥なんてものはないが、まぁ、学校で言うところの仲良しグループ的なものは存在している。


あたしは別に何でも良いのだが、葵やサキちゃんと共に、一括りにされることは多い。


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