月影
4月も終わりに差し掛かれば、もう凍てつくような寒さとは無縁の日々が続く。
少し前、一度だけ綺麗な女の人と相変わらず腕を組んで歩くジルの姿を見て以来、彼の姿をこの街で見ることはなくなった。
毎回毎回、違う女の人ってことは、救いではあるのだろうか。
「レナちゃーん!」
刹那、思わず身を固め、足を止めてしまう。
顔をあげて辺りを伺えば、視線の先にはこちらに向かって手を振っている男。
ヤンチャな顔していけ好かない関西弁のあの人が、小走りで近付いて来るのだから、嫌になる。
「…お久デス。」
「日本語変やで。」
「…すいません。」
もう、あたしの口元は明らかに引き攣っているのだが、彼はそれを気にも留めないように笑っている。
そんなことが逆に怖くて、毎度毎度あたしは、ビクつきながらギンちゃんと話すのだ。
「ジル、知らへん?」
「知らないって言ってるじゃないですか。」
大体いつも、呼び止められてはジルのこと。
だけど今日はどうも様子が違うようで、彼はん~、と困って見せた。
「連絡もない?」
「ないですよ。
あたしに連絡してくるほど暇じゃないでしょうし。」
「ホンマにか?」
「本当です。
別に、あたしの携帯見てくれたって構わないし。」
珍しくしつこくて、握っていた携帯をわざとのように差し出せば、彼はやっと諦めるようにため息を混じらせてくれた。
少年のような顔を張り付けているようなこの人が困った顔するなんて、どうもおかしいとは思うけど、でも、関わりたくはないのが正直なところ。
少し前、一度だけ綺麗な女の人と相変わらず腕を組んで歩くジルの姿を見て以来、彼の姿をこの街で見ることはなくなった。
毎回毎回、違う女の人ってことは、救いではあるのだろうか。
「レナちゃーん!」
刹那、思わず身を固め、足を止めてしまう。
顔をあげて辺りを伺えば、視線の先にはこちらに向かって手を振っている男。
ヤンチャな顔していけ好かない関西弁のあの人が、小走りで近付いて来るのだから、嫌になる。
「…お久デス。」
「日本語変やで。」
「…すいません。」
もう、あたしの口元は明らかに引き攣っているのだが、彼はそれを気にも留めないように笑っている。
そんなことが逆に怖くて、毎度毎度あたしは、ビクつきながらギンちゃんと話すのだ。
「ジル、知らへん?」
「知らないって言ってるじゃないですか。」
大体いつも、呼び止められてはジルのこと。
だけど今日はどうも様子が違うようで、彼はん~、と困って見せた。
「連絡もない?」
「ないですよ。
あたしに連絡してくるほど暇じゃないでしょうし。」
「ホンマにか?」
「本当です。
別に、あたしの携帯見てくれたって構わないし。」
珍しくしつこくて、握っていた携帯をわざとのように差し出せば、彼はやっと諦めるようにため息を混じらせてくれた。
少年のような顔を張り付けているようなこの人が困った顔するなんて、どうもおかしいとは思うけど、でも、関わりたくはないのが正直なところ。