月影
部屋の中へとなだれ込むと、会いたかったという気持ちが勝っていた自分自身に気が付いた。
涙が溢れて、それでもむさぼるように唇を奪い合いながらふたり、フローリングへと身を沈める。
拓真の顔が不意に脳裏をよぎり、自分自身の醜さを痛感した。
「泣くなよ、レナ。」
光のひとつも灯されていない部屋の中で、ポツリと落とされたそんな台詞。
涙が拭われ、また軽くキスをされる。
なのにまだ、あたしは泣きじゃくることしか出来なくて、春の夜風に冷えた体によって抱き締められた。
「悪かったよ、マジ。
ちょっと色々あってさ、こっちに居なかったから。」
「…嘘つきっ…」
「え?」
「アンタの嘘なんかもう良いよ!」
言ってて声が震えてて、肩で息をするように呼吸を落ち着けた。
暗がりの中でもジルの瞳は困惑するように揺れていて、相変わらずあたしは目を逸らすことしか出来ないのだけれど。
「誕生日、あたしちゃんと電話したよ。」
言ってて、本当に嫌になる。
春とは言え、ひどく冷たいフローリングを背に、手首のブレスまでもが熱を失っている。
「アンタ、携帯の電源すら入ってなかったじゃん。
聞いたよ、“花穂サン”って言うんでしょ?」
「…聞けって、レナ…」
「何聞かせんのよ!
今度は言い訳?!」
「聞けっつってんだろ!」
声を荒げたはずが逆に怒鳴られ、身をすくめた。
顔を覆っていた手は容易く退かされ、そこに彼の指が絡む。
涙が溢れて、それでもむさぼるように唇を奪い合いながらふたり、フローリングへと身を沈める。
拓真の顔が不意に脳裏をよぎり、自分自身の醜さを痛感した。
「泣くなよ、レナ。」
光のひとつも灯されていない部屋の中で、ポツリと落とされたそんな台詞。
涙が拭われ、また軽くキスをされる。
なのにまだ、あたしは泣きじゃくることしか出来なくて、春の夜風に冷えた体によって抱き締められた。
「悪かったよ、マジ。
ちょっと色々あってさ、こっちに居なかったから。」
「…嘘つきっ…」
「え?」
「アンタの嘘なんかもう良いよ!」
言ってて声が震えてて、肩で息をするように呼吸を落ち着けた。
暗がりの中でもジルの瞳は困惑するように揺れていて、相変わらずあたしは目を逸らすことしか出来ないのだけれど。
「誕生日、あたしちゃんと電話したよ。」
言ってて、本当に嫌になる。
春とは言え、ひどく冷たいフローリングを背に、手首のブレスまでもが熱を失っている。
「アンタ、携帯の電源すら入ってなかったじゃん。
聞いたよ、“花穂サン”って言うんでしょ?」
「…聞けって、レナ…」
「何聞かせんのよ!
今度は言い訳?!」
「聞けっつってんだろ!」
声を荒げたはずが逆に怒鳴られ、身をすくめた。
顔を覆っていた手は容易く退かされ、そこに彼の指が絡む。