月影
時々思う。


ジルはあたしを犯すように抱くことで、理由付けをしているんじゃないか、と。


わかんないけど、そんな気がした。



「ねぇ。」


「ん?」


「あたし待ってる間、どんなこと考えてた?」


「寒すぎだろ、とか。」


「…他には?」


「俺はホスト以下かよ、とか。」


「悔しかったんだ?」


笑うと、ジルは白灰色を吐き出した。


いつも通りに彼の体の上に頭を預けた状態のあたしが居て、本当にいつも通り、ジルはそんなあたしの頭を撫でる。


終わってしまうのなら、眠るのが勿体ないな、と思った。



「寂しかったよ、ホントは。」


ポツリと落とされた、そんな台詞。


鏡越しの自分を見ているかのような瞳に、切なさに駆られる。



「色掛けられるだけってわかってて、何であんなとこ行くかねぇ。」


「色じゃないよ、本気で口説かれてるっぽい。」


そう言ってみれば、彼は驚いたような顔でこちらを一瞥した。


もしかしたらあたしは、無意識のうちにジルを試そうとしているのかもしれない。


なのにジルは、何も言ってはくれなかった。


誕生日が全然喜ばしいものじゃないなんて、今にわかったことでもないはずなのに。

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