月影
「んでも、俺的にはジルとレナちゃんのが仲良しサンに見えるけどね。」


冗談とも本気ともつかないような顔でギンちゃんは相変わらず笑うのだが、ジルはそんな顔を一瞥するだけで、また煙を吐き出した。


この人は一体どこまで知っているのだろうかと思うと、あたしも曖昧にしか笑えないわけだけど。



「つか、お前帰れよ。」


「何やねん。
俺はただ、レナちゃんに会いにきただけやんか。」


「お前、こんなとこで遊んでる場合じゃねぇだろ。」


「それはジルくんの方やんけ。」


で、また軽く口喧嘩が始まった。


多分、小馬鹿にするようなギンちゃんの発言にも問題があるのだとは思うけど。


結局のところ、ふたりして何をしに来たのかなぁ、とは思う。



「やっぱ仲良いんじゃん。」


笑い、作ったお酒をジルの前へと置いた。


何だかんだでふたりは親友っぽい感じで、とりわけ仲の良い友達というものが居ないあたしには、やっぱり少し、羨ましく思えてならないから。



「まぁ、俺らは昔から一緒やったけど、今は仕事でもパートナーみたいなモンやしね。」


「ギーン。」


遮るようにジルが睨むと、彼はヤベッ、と言った顔をした。


ジルやギンちゃんが何の仕事をしているのかは、今もあまりよくは知らない。


まぁ、聞く気もないけど、聞いたって教えてくれるとも限らないわけだし。


それからふたりはコソコソと耳打ちを始め、今日は延長をすることなく帰ることを決めたようだ。

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