月影
部屋に入るとふたり、ベッドへと雪崩れ込んだ。


正直、もう何でも良かったのかもしれない、ただ、貪り合うように身を交わらせた。


それだけでもう、無駄な思考を振り払えるのだから。



「ジル、疲れてるね。」


「お前もな。」


「じゃああたし達、お疲れコンビだね。」


「…コンビかよ。」


笑うと、彼も呆れたように口元を緩めた。


本当にこんな瞬間ですら、一体いつ振りなのかも思い出せないほど。



「そういやあの女、帰りにも居たな。」


「あぁ、彩?」


「あれ、仲良いの?」


「まぁ、普通かな。」


ん~、と考えながら言うと、やめとけ、と彼は言う。


葵のことにしても、あたしの交友関係にこれほどまでに口を出すだなんて、今日のジルはやっぱり何かが変だ。



「今度は何で?」


「別に。」


そう言うと、彼はベッドから抜け出て我が家の冷蔵庫を漁り始める。


結局納得できる回答は得られず、あたしは諦めるようにため息混じりに宙を仰いだ。



「あと、あの馬鹿共だけど。
アイツらもう終わり。」


多分、今日来ていたタカくんとヨッシーくんのことを言っているのだとは思うけど。



「…終わり、って?」


「終わりは終わりだよ。
使えねぇガキに用はねぇから。」


吐き捨てるような台詞だった。


ジルに意識はないのだろうが、仕事の話をあたしにするだなんて、やっぱり余裕がない証拠なのだろう。

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