月影
死と喪失感
梅雨のある日、それは突然の出来事だった。
耳に触れた台詞を頭の中で反復させてみれば、膝が震え、立つことさえも出来ずにその場にへたり込んでしまう。
呼吸が乱れ、訳もわからぬままにただ涙が溢れ、嗚咽が混じった。
そのまま無意識のうちに握り締めていた携帯を再び操作し、あの人へのコールを鳴らす。
『…レナ?』
ジル、と言おうとしたけど、上手く言葉にならなかった。
電話越しだとはいえ、彼の声を聞いたはずなのに、喜べるほど心に余裕なんて残されてはいない。
『お前、泣いてる?』
「…ジル、助けっ…」
やっと言えたのは、それだけだった。
夜とはいえ、街の真ん中で膝を抱えてしゃがみ込んでいるあたしを、通行人は一瞥しながらも迷惑そうな顔で通り過ぎる。
『何があった?
つか、今どこだ?』
「…シュウが、シュウがっ…」
『レナ、落ち着け!』
低く、ダイレクトに耳に響いた声に、思わず身をすくめた。
先ほど、シュウの携帯から、あの小料理屋のおかみさんが電話してきた。
そして、あの子が病院に緊急搬送されたのだ、と。
どんな状況なのかは一切わからなかったけど、彼女の焦ったような涙混じりの声色に、死、という単語を思い浮かべてしまう。
『すぐ行くから!
お前、絶対そこ動くなよ!』
途切れ途切れに先ほどのことを話すと、そんな一方的な命令口調と共に、通話は遮断された。
どのみち動くことなんて不可能だろうけど、恐怖で立ち上がることさえも出来ないまま。
怖かった。
シュウが死ぬこと、そしてこの世から居なくなることが。
耳に触れた台詞を頭の中で反復させてみれば、膝が震え、立つことさえも出来ずにその場にへたり込んでしまう。
呼吸が乱れ、訳もわからぬままにただ涙が溢れ、嗚咽が混じった。
そのまま無意識のうちに握り締めていた携帯を再び操作し、あの人へのコールを鳴らす。
『…レナ?』
ジル、と言おうとしたけど、上手く言葉にならなかった。
電話越しだとはいえ、彼の声を聞いたはずなのに、喜べるほど心に余裕なんて残されてはいない。
『お前、泣いてる?』
「…ジル、助けっ…」
やっと言えたのは、それだけだった。
夜とはいえ、街の真ん中で膝を抱えてしゃがみ込んでいるあたしを、通行人は一瞥しながらも迷惑そうな顔で通り過ぎる。
『何があった?
つか、今どこだ?』
「…シュウが、シュウがっ…」
『レナ、落ち着け!』
低く、ダイレクトに耳に響いた声に、思わず身をすくめた。
先ほど、シュウの携帯から、あの小料理屋のおかみさんが電話してきた。
そして、あの子が病院に緊急搬送されたのだ、と。
どんな状況なのかは一切わからなかったけど、彼女の焦ったような涙混じりの声色に、死、という単語を思い浮かべてしまう。
『すぐ行くから!
お前、絶対そこ動くなよ!』
途切れ途切れに先ほどのことを話すと、そんな一方的な命令口調と共に、通話は遮断された。
どのみち動くことなんて不可能だろうけど、恐怖で立ち上がることさえも出来ないまま。
怖かった。
シュウが死ぬこと、そしてこの世から居なくなることが。