月影

失うばかり

その日は疲れもあってすぐに眠りに落ち、翌日にはもう、お店に出た。


岡ちゃんはいつも、どこからかあたしの情報を入手していて、心配するメールをくれていたから。


ちなみにあの人はもう60代だというのに、異常に可愛いメールをくれ、笑ってしまったんだけど。


気付けばこんなにも、あたしを心配してくれる人が居たのだと、逆に驚かされてしまったわけだけど。


手首には相変わらずのブルガリのブレス、そして新たにシュウのくれたピアスも加わった、いつも通りの日常に戻りつつあった。



「弟が居たなんて知らなかったよ。
しかも、病気だったなんて。」


そう、岡ちゃんは渋い顔で腕を組んだ。


いつぞやの“友達の話”を覚えているのかもしれない。



「まぁ、今日は飲んで良いぞ。」


「ごめんね、岡ちゃん。
あたし、当分は喪に服す意味でもお酒抜くことにしてるんだ。」


だからどうぞ、と言って、彼の分だけのお酒を作って置いた。


そして、あたしはノンアルコールで乾杯をする。



「お前、ちゃんと飯食ってるか?」


「何かね、みんなその心配ばっかしてくれんの。」


痩せてラッキーなのに、とおどけたように付け加えると、彼は困ったように肩をすくめて見せる。


確かに最近、あまり食べられなくなった上にアルコールも抜いていて、痩せたと言うよりはやつれたようだ、と言われるけれど。


心持ちだけは元気なのにな、と思う。


それと共に、これからのことを考えなければな、とも。

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