月影
第五章-愁傷-
疑惑と痛み
シュウの四十九日は、親族のみでしめやかに執り行われた。
体裁を気にする両親に出席するように言われ、もう会うこともないと思っていた彼らと顔を合わせた。
けど、あたしは法要には参加させてもらえず、別室に待機させられることとなったのだ。
曰く、娘が水商売だなんて知られたら困る、らしい。
じゃあ、何で呼んだんだよ、って感じだけど、シュウが寂しがってる気がして、ただ来ただけのこと。
あの子が居なくなった心の穴は、まだ塞がってはいないのだ。
「愛里。」
お父さんが部屋へと入って来て、そしてあたしの名前を呼び、向かいへと腰を降ろす。
答えず今日も雨のけぶる窓の外へと視線を移すと、彼はあからさまにため息を混じらせながら、ネクタイを緩めた。
「お父さんの古くからの友人が、小さいながら会社をしているんだ。
そこに口をきいてやるから。」
だから、その人のところに就職しろ、とでも言いたいらしい。
そんなことのために呼ばれたのか、と思いながら、「嫌だ。」とだけ返した。
「あたしのこともさ、もう死んだと思ってくれて良いよ。」
自嘲気味に言うと、向かい合う彼は立ち上がり、こちらへと歩み寄り、平手を振り上げた。
その瞬間、バチンと乾いた音が響き、あたしは頬を張られる形になったのだ。
痛みと憤りで唇を噛み締め、睨み返すと、お父さんは「ふざけるな!」と声を荒げる。
「就職が嫌なら、大学に行け。
今からでも予備校に申し込みは出来る。」
「は?」
「シュウもきっとそれを望んでる。」
吐き捨て、そして彼はきびすを返した。
あたしは震える拳を握り締め、悔しさを押し殺すことしか出来ないまま。
体裁を気にする両親に出席するように言われ、もう会うこともないと思っていた彼らと顔を合わせた。
けど、あたしは法要には参加させてもらえず、別室に待機させられることとなったのだ。
曰く、娘が水商売だなんて知られたら困る、らしい。
じゃあ、何で呼んだんだよ、って感じだけど、シュウが寂しがってる気がして、ただ来ただけのこと。
あの子が居なくなった心の穴は、まだ塞がってはいないのだ。
「愛里。」
お父さんが部屋へと入って来て、そしてあたしの名前を呼び、向かいへと腰を降ろす。
答えず今日も雨のけぶる窓の外へと視線を移すと、彼はあからさまにため息を混じらせながら、ネクタイを緩めた。
「お父さんの古くからの友人が、小さいながら会社をしているんだ。
そこに口をきいてやるから。」
だから、その人のところに就職しろ、とでも言いたいらしい。
そんなことのために呼ばれたのか、と思いながら、「嫌だ。」とだけ返した。
「あたしのこともさ、もう死んだと思ってくれて良いよ。」
自嘲気味に言うと、向かい合う彼は立ち上がり、こちらへと歩み寄り、平手を振り上げた。
その瞬間、バチンと乾いた音が響き、あたしは頬を張られる形になったのだ。
痛みと憤りで唇を噛み締め、睨み返すと、お父さんは「ふざけるな!」と声を荒げる。
「就職が嫌なら、大学に行け。
今からでも予備校に申し込みは出来る。」
「は?」
「シュウもきっとそれを望んでる。」
吐き捨て、そして彼はきびすを返した。
あたしは震える拳を握り締め、悔しさを押し殺すことしか出来ないまま。