月影
「忠告したはずやで。
ジルに本気にならん方がえぇ、って。」


「…関係ない、って言いましたけど?」


「まぁ、えぇけどね。
レナちゃん、騙されとるだけちゃうの?」


騙すとは、どういうことだろう。


ジルがあたしに何か嘘をついているとも思えないし、そんなことをするメリットもないのだから。


でも、はっきりとそう聞いてきたギンちゃんに、否定すべき言葉が見つからない。



「お前ら、ホンマにムカつくわ。
何に必死になっとんねん。」


アンタを助けるためにだよ、と言ってやりたかった。


正直あたしはギンちゃんが好きではないし、こんな風に言われなきゃならない理由だってないんだから。



「…何であの日、彩を指名したんですか?」


やっと言えた疑問を投げると、彼は宙に投げていた視線をこちらへと戻した。



「そんなん、レナちゃんに関係あらへんやろ。
俺があの子のこと指名して、何か問題でもあるん?」


でも、迎えに来てたじゃない。


とは言えず、あたしは唇を噛み締めた。


つまりはあたしが言わなければ、彼も何も言わないといったところだろう。

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