月影
塞げない穴は、痛みを帯びるばかりする。


何でこんな日に限って歩いて帰ったのだろう、何であの道を通り、あんな光景を見てしまったのだろう。


ふたりは笑い合っていた。


一緒に腕を組んで歩くことも、煙草に火をつけることも、あたしとはしなかったことなのに。


ジルも彩も、何を考えているのだろうか。


彼の行為は裏切りではないはずなのに、それでも、何もかもが気持ち悪くて堪らないのだ。


結局それから、クロスに行った。


浴びるほど飲むあたしに拓真は、心配しながらも勝手にさせてくれるから。


涙はもう、涸れてしまったようだ。

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