月影
もう、好きとか嫌いとか、そんな単純な感情ではなくなっていたのかもしれない。


シュウに対して、ぶっちゃけさっさと死んでくれれば良いのに、とさえ思っていたあたしが、今はジルに対し、死なないで、と強く願っているのだから。


頼りないだけの瞳はあたしを捕え、まるで真意を探ろうとでもしているみたい。



「止めんなら今だぜ?」


「良いの、殺してくれても構わない。」


刹那、咥えていた火もついていない煙草を投げ捨てたジルは体を反転させるようにしてあたしの上に乗った。


やっぱりその瞳は冷たいままで、相変わらず獣のようだと思ってしまう。


頭の上で両手首を捕えられるような格好になり、口は手の平によって覆われ、首筋に噛みつくようなキスが落とされる。


ジルは自分のことを幽霊みたいなものだと言ってたけれど、それよりもどちらかと言えば、吸血鬼のようだと言った方が良いだろう。


夜にしか会わないし、不健康な顔色してるし、女の生き血を吸って辛うじて生きてる感じ。



「…レナ…」


そう、あたしの名前が宙を舞ったのを最後に、彼は一言も言葉を発しなかった。


まるで喰らうようにまさぐられ、貪られながらあたしは、痛みにも似た快楽の中に身を沈めた。


多分、この行為は恋人達の甘くとろけるようなものとは似ても似つかず、喘ぐと言うよりは悲鳴に近いのだろう。


ジルは何かを振り払うようにあたしを抱いていたけれど、それでも良いと思った。


散々中を掻き回され、何度か果てたあたしを見届けた後、引き抜いた指をぺロリと舐め上げ、彼は猛るモノを侵入させる。


一言で言えば、犯されてる感じ、といったところだろう。


もう、声さえ上げられず、ただ首を横に振ることでしか意志を示せなかったけど、ジルは空いていた右手の平であたしの首を鷲掴み、力を込める。


軽いチアノーゼと共に意識が飛びそうになり、結局あたしはまた、イッてしまった。

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