月影
ジルの誕生日は、それからすぐにやってきた。


あれからお互いに連絡を取ることはなかったが、あの日の帰り際、彼は「カレー食わして。」とあたしに言った。


だからメニューはあっさり決まってしまった。


でも問題は、プレゼントだ。


結局散々悩んだ末に、ブランド物の黒いマフラーにしてやった。


夏にマフラーをプレゼントするだなんて、人が聞いたら笑うだろう。


実際、店員さんも困っていた。


けれども寒がりなあの人にそれ以上のものは思い付かず、わざわざ取り寄せてもらったのだ。


偶然にも、休みの日だったことは幸いなのだろうか。

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