月影
ジル。

彼の仕事は常に命の危険があって、ろくでもないのだと自らが言っていた。




バカラ賭博と、ノミ屋。


そこが拠点であり、“グランディー”、“チャコール”と呼ばれる店でもある。


ノミ屋とはつまり、JRA(日本中央競馬会)を介さない、違法な馬券を販売するところだ。


勝てば配当は通常より多いので、客はそちらを買いたがるのだという。


違法賭博にしても、そこをフラフラとしながらジルは、獲物を探す。


あとちょっとで勝てるのに、と思う人間の心理につけ込み、所持金を使い果たした客に上手いこと言って金を貸すのだ。


当然まともな金ではないのだから、回収も普通の人間の考えでは及ばず、もちろんそれも、ジルの仕事の内。


他にもパチンコ屋で同じように“090金融”と呼ばれることをしてみたり、時にはゴト師のようなこともするのだとか。


台を不正に操作し、出玉を増やす。



「この人はもっとタチが悪いよ。」


これは拓真の言葉だった。


ギンちゃんが風俗に落とした女を繋ぐのまた、ジルの仕事になることもあるのだとか。


それが女と歩いている理由だったのだ。


最近では、ジルも女を風俗に落とすようになり、ゴトの打ち子や偽造カードでの借り子、何でもやるようになったのだという。


前に彼の部屋で見た偽ブランドも、ヤバいクスリと一緒に流すのだとか。


それはきっと、嶋さんとのあの約束の所為だろうと思った。

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