月影
最終章-情愛-
新たな日々
傷は深く、無数にあたしをえぐっていた。
大切だった人たちが、ひとり、またひたりと居なくなる度にあたしから剥がれ落ちたものは、痛みだけを残していった。
だからこそ、拓真の存在は傷薬に近かったのかもしれない。
ただれて、膿んだ患部に優しく塗り込めるように、拓真はあたしを愛してくれた。
自宅には、あれ以来足を踏み入れてはいない。
ジルに会うんじゃないかという恐怖もあったし、散らかったままのあの部屋に行く気にはなれなかった。
何より、拓真との暮らしの中で、その必要性は全くなかったからだ。
ただ、解約もしていない。
荷物だってどうすることも出来ず、ずっとあのまま放置している。
家賃だけは引き落とされているらしいけど、拓真がどうしろと言うこともなく、それには触れて来なかった。
一緒に暮らすということに、抵抗はなかった。
拓真は毎日のようにあたしを元気づけてくれたし、笑わせてもくれた。
ご飯を作ると美味しいと言ってくれるし、そんな他愛もないことで癒されもしたのだ。
拓真が好きだった。
でも、愛しているのかどうかは、自分でもよくわからなかった。
大切だった人たちが、ひとり、またひたりと居なくなる度にあたしから剥がれ落ちたものは、痛みだけを残していった。
だからこそ、拓真の存在は傷薬に近かったのかもしれない。
ただれて、膿んだ患部に優しく塗り込めるように、拓真はあたしを愛してくれた。
自宅には、あれ以来足を踏み入れてはいない。
ジルに会うんじゃないかという恐怖もあったし、散らかったままのあの部屋に行く気にはなれなかった。
何より、拓真との暮らしの中で、その必要性は全くなかったからだ。
ただ、解約もしていない。
荷物だってどうすることも出来ず、ずっとあのまま放置している。
家賃だけは引き落とされているらしいけど、拓真がどうしろと言うこともなく、それには触れて来なかった。
一緒に暮らすということに、抵抗はなかった。
拓真は毎日のようにあたしを元気づけてくれたし、笑わせてもくれた。
ご飯を作ると美味しいと言ってくれるし、そんな他愛もないことで癒されもしたのだ。
拓真が好きだった。
でも、愛しているのかどうかは、自分でもよくわからなかった。