月影
「俺、キングスでナンバーワン取ったら自分の店出すつもり。
ホストも辞める予定だしさ、愛里がキャバ辞めても大丈夫だよ。」


「…何で?」


「俺のお嫁さんになるからじゃない?」


笑いながら拓真は、未来を語ってくれる。


心がほっこりして、気恥しかったけど、嬉しくもあった。


拓真と居ると、幸せなのだ。



「…キャバ、辞めてほしい?」


「まぁ、正直言うとね。
けど、俺もホスだし言えないじゃん?」


“ホストの拓真”に対し、不安はなかった。


拓真にはプライドがあり、絶対にマクラをせずにナンバーワンを目指すと豪語していたから。


愛くるしい見た目の奥には、確固たるものを持っていたのだ。


割り切った営業を見れば、信じられた。


だからもしかしたらあたしは、あれほど執着していたはずのアイズを辞めても良いと思っていたのかもしれない。


あそこだけがあたしの居場所だと思っていたけれど、今は拓真がそれを与えてくれるから。


気付けば夏は終わっていた。

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