月影
いつもと何も変わらず仕事を終え、どっと疲れた体の力を抜いた。
これからキングスに行って、その後拓真と一緒に帰宅し、昨日作ったケーキを二人で食べ、お祝いするつもりだ。
きっと、こんなあたしの小さな迷いさえ、彼なら吹き飛ばしてくれるだろうと思う。
いや、それを願っていたのかもしれない。
ここ最近はずっとすれ違いだったし、だから余計なことを考えてしまうのだろうと思ったから。
「レナさん!」
身支度を済ませてロッカーの扉を閉めた時、彩に呼び止められた。
一度腕時計に目をやり、「どしたの?」と問うと、携帯片手の彼女は深刻そうな顔をする。
「…みっくん、携帯の電源切ってるみたいなんです。」
だから何だよ、って感じだが、顔には出さなかった。
正直今は早く、拓真のところに行きたいと思っていたから。
「ずっと連絡してるのに、繋がらないんです。」
「わかんないけど、地下にでも居るんじゃないかな?」
安心させるように笑い、それじゃあね、とあたしは早々にきびすを返した。
季節はもう秋だ。
送迎の車を断って、おまけにアフターも断って外に出ると、夜風が冷たく吹き抜けた。
一度目を細め、顔をあげた瞬間、驚いて心臓が跳ね上がる。
彼が佇んでいたからだ。
これからキングスに行って、その後拓真と一緒に帰宅し、昨日作ったケーキを二人で食べ、お祝いするつもりだ。
きっと、こんなあたしの小さな迷いさえ、彼なら吹き飛ばしてくれるだろうと思う。
いや、それを願っていたのかもしれない。
ここ最近はずっとすれ違いだったし、だから余計なことを考えてしまうのだろうと思ったから。
「レナさん!」
身支度を済ませてロッカーの扉を閉めた時、彩に呼び止められた。
一度腕時計に目をやり、「どしたの?」と問うと、携帯片手の彼女は深刻そうな顔をする。
「…みっくん、携帯の電源切ってるみたいなんです。」
だから何だよ、って感じだが、顔には出さなかった。
正直今は早く、拓真のところに行きたいと思っていたから。
「ずっと連絡してるのに、繋がらないんです。」
「わかんないけど、地下にでも居るんじゃないかな?」
安心させるように笑い、それじゃあね、とあたしは早々にきびすを返した。
季節はもう秋だ。
送迎の車を断って、おまけにアフターも断って外に出ると、夜風が冷たく吹き抜けた。
一度目を細め、顔をあげた瞬間、驚いて心臓が跳ね上がる。
彼が佇んでいたからだ。