月影
さすがに驚いて、言葉の意味を確認するように、それぞれが嶋さんの顔を見た。


だけども彼は煙を吐き出しながら、それにため息を混じらせる。



「俺も旅に出なきゃならねぇからよぉ。」


「……え?」


「ムショだよ、ムーショ。
俺が入らなきゃもう、ダメみてぇなんだよなぁ。」


嶋さんは、まるで他人事のようだった。


カシラが刑務所に入るなんて、それって大変なことなんじゃないだろうか。


何だか働かない頭で首をひねっても、そんな陳腐なことしか思い浮かばない。



「強制捜査の情報が漏れてるって警察もわかってんだよ。
内部に情報を漏えいさせた人間がいるとなると、ヤクザとの繋がりがあるってことだろう?」


つまりはそれがバレると他にも被害が広がるため、自分がパクられることで納めるつもりなのだと言う。


もちろんくだらないことでわざと捕まるのだから、5年もすれば出てこられるのだと言うけれど。



「お前らは元々、俺が飼い始めた犬だ。
ヤクザでもねぇ預かりみてぇな身なんだし、俺がいなくなりゃあ用はねぇ。」


上手く頭が回らなかった。


ジルとギンちゃんは驚いた顔を見合せながら、やっぱり困惑している様子だ。



「…じゃあ、俺らはもう…」


「早く病室戻れ、ってことだよ。」


わかんなかった。


でも、ジルもギンちゃんも、もうあんな仕事をしなくても良いということ?


あたし達は飛び降りなくても、苦しまなくても済むと言うこと?



「息子同然のヤツに目の前で死なれるのなんか迷惑だ、っつったろう?」

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