月影
「…彩、どうなったの?」


「わかんねぇけど、陸が任せろ、って。」


あたしはアイズを辞めたから、それから彼女がどうしたのかは、わからない。


ジルは本当は何か知っているのかもしれないけれど、でも、あたしも無理に聞き出そうとは思わなかったのだ。


ジルはいつものように、心配すんな、としか言わないから。




少し落ち着いたら、葵に連絡してみようと思う。


お互い色んな事があって、自分を見つめ直して、今ならきっと、過去のこととして笑い合える気がしたから。


両親にも会って、花穂サンにもお礼を言いに行かなければならないと思う。


そうやって、ジルと一緒にひとつひとつ乗り越えて、ごめんなさいとありがとうを繰り返しながら生きていきたい。


前を向いてみたら、そうやってちっちゃな希望が生まれたんだ。


乗り越えなければならないことだって、多いのかもしれないけれど、それでも、ジルと一緒なら自然と大丈夫だと思えた。


きっとこれが、岡ちゃんがいう“心から望む形”というものなのだろう。


もう、見失わないよ。

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