月影
「それよりさ、何やってたの?
買い物とか?」


小包を一瞥して聞くと、あぁ、とジルは思い出したように頷く。


彼の手に持つそれは、一見プレゼントの包装のようにも見えるが。



「そうだ、お前これから暇ならちょっと付き合えよ。」


「…どっか行くの?」


「これ渡しに。」


ラッピングからしても、女の子に渡すものに見える。


少し疑惑の目を向けたが、まぁ暇だしな、と肩をすくめ、「良いよ。」とあたしは言った。


肌寒くなった通りを一緒に歩き、ふたり、ジルの車へと乗り込んだ。


彼はどこかに電話をし、これから行くから、なんて言っている。



「で、どこ行くの?」


「俺の婚約者んとこ。」


「へぇ、モテてんだね。」


「…お前、ちょっとは嫉妬する素振り見せようよ。」


「で、ホントは?」


「だから、婚約者んとこ。」


はいはい、と話を終わらせた。


ジルは何だか楽しそうな様子で車を走らせている。


またコイツは、と、あたしにとってはいつものことで、今更嫉妬も何もない。

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