月影
「まぁ、これがまた面倒な話なんだけどな?」


そう言いながら、ジルは生い立ちを語り始める。


母親はみんな一緒なんだよ。


だから血は繋がってんだけどな、と。


母親のことを奈緒子さん、と彼は言った。



「奈緒子さんの趣味は戸籍の入れ抜きだよな?」


ジルを産んだのは、彼女が16の時だと言う。


旦那、つまりはジルの実の父親はろくでもない男だったらしく、すぐに離婚。


若かった彼女はひとり息子を置いて遊び呆け、マサくんを身ごもった。


それが彼にとって二人目の父親だったらしい。


それでもジルは、3つ下に弟が出来、嬉しかったのだと言っていた。


けれどもそれも長くは続かず、また離婚。


その間も寂しくなっては誰かと結婚してみたりと、まるで洋服を着替えるようだった、とジルは話す。


アユちゃんの父親とは、長く続いたらしい。


8つ下の妹も出来て、花穂サンやギンちゃんと出会ったのもその頃、と。



「でも、別れたのってアユが小6ん時だっけ?
俺やマサは奈緒子さんの所業には慣れたけど、アユはそうじゃないから。」


だからあんな家には居させられないと言い、マサくんがアユちゃん連れ出したようだ。


そして、今はふたりで暮らしているらしい。

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