月影
epilogue――月影
缶ビール片手にベランダに出た時、まばゆいばかりに輝く星の数に圧倒された。


冬の夜、吐き出した吐息は白く、澄んだ空気の中でアルコールが沁み渡る。


ジルは寒い寒い、と文句を言いながらも、何故かあたしの横に立ち、一緒に闇空を仰いでいた。



「うちのベランダからでもさ、こんなに星って見えたんだね。」


「気持ちの問題だよ、こんなの。
今まではさ、俺らこうやってゆっくりする時間もなく毎日が過ぎてたから、気付かなかっただけだよ。」


月も星も、気付かなくても絶対にそこにあるものなのだと、ジルは言う。



「死んだら星になるって話、あたし嫌いじゃないよ。」


言うと、彼は小さく笑った。


シュウが死んだことは確かに悲しいし、乗り越えられたかと聞かれれば、今もよくわからない。


ただ、それでも、あの輝きの中のひとつになったんだとしたら、決して辛いだけのことだとは思わなくなったから。



「天国だとか地獄だとか、そういう話よりはずっと夢がある。」


「じゃあお前、俺と一緒にあの時死んで、星になりたかった?」


いつかなりたい、とあたしは返した。


死にたいと思うことはなくなったけど、やっぱり死んだらあたしも星になりたいと思う。


ジルは笑いながらきびすを返し、部屋の中へと入ってしまったので、あたしもその背中を追い、ベランダの扉を閉めた。


次第に体は暖房の熱に包まれ、彼は体をベッドへと投げる。



「俺らはさ、一緒に生きるために生まれてきたんじゃねぇの?」

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