月影
少し驚いたが、次には思わず笑ってしまった。



「一緒に死ぬために、って言ってなかった?」


同じことだよ、と彼は言う。


飲みかけの缶ビールをテーブルの上に置くと、伸びてきた腕に引き寄せられた。



「一緒に生きて、一緒に年取って、それで疲れたら、その時死ぬんだよ。」


「一緒に?」


「そう、一緒にね。」


あたし達はただの死に損ないだ。


あの無数の星の中のひとつになり損ねただけの存在。



「俺らはさ、頑張りすぎて、力抜いて生きること忘れてたんだよ。」


それが花穂サンの言う“忘れもの”なんじゃないかと、ジルは言う。


彼の胸の中で、あたしはそうだね、と返した。



「つーか、これってやっぱプロポーズになんのかな?」


あたしが笑うと、ジルも困ったように笑っていた。


そしてまた、そうだね、と言うと、今度は呆れたような顔をされてしまう。


触れ合う部分から互いの熱が溶け出し、目が合って、あたしからキスをした。



「お前は酔っ払うとすぐそうやって甘えたがる。」


「嫌なんだぁ?」


「嫌じゃねぇけど、ちょっと心配。」


あははっ、と笑ってしまう。


今日のジルは、随分と可愛いようだ。

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