月影
クリスマスという日にお金を払ってでも独りで居たくないという気持ちは、分からないわけではない。


世の中、寂しい人が多いんだなぁ、なんてテーブルの埋まった店内を見渡したほど。


作りモノのあたしを見て、みんな喜んでくれるのだ。


あたしはそんなものを見て、どんな感情を持てば良いのかわかんなかった。




当然だけど、ジルは来なかった。


連絡もなかったけど、まぁ、元々会わない時まで連絡は来ないし。


あたしはあたしのクリスマスを過ごし、ジルもまた、ジルのクリスマスを過ごしたことだろう。


きっと寒がりなあの人はあたしじゃない人にあたためてもらっているのだろうし、あたしに見せない顔して笑ってるんだ。


あたしがここで笑っているのと同じように。




拓真が忙しいだろう中、メリクリメールを送ってきたのには笑ってしまったけど、多分他の子に送るついでなんだろうと思う。


だからあたしも、他の人に送るついでに、メリクリー、と返信しておいた。


たくさんの物を貰ったし、たくさんの額を稼いだとも思う。


たくさん酔っ払ったし、お客もたくさん笑顔になってくれたけど、でも、やっぱり埋められないものは確かにあった。


ジルにしか埋められない場所が、確実にあたしの奥底には存在しているのだろう。


そして何故、あたしがこんなことをしているのかがまた、わからなくなった瞬間でもあった。


シュウは今日も、見つからない。


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