月影
思い返せばここ数日、連日のように飲みまくったな、と思ってしまう。


仕事が終わってもお店のロンリーな子たちと一緒に付き合いで飲み会にも参加したし、同伴もアフターも酒抜きは語れないほど。


お店は大みそかまでぶっ通しで営業してるし、お正月休みは三が日のみなんだと言う。


まぁ、あたしには予定なんてないから、どうだって良い話だけれど。




やっと店休である日曜日を迎え、疲れきった体をベッドへと投げたまま、起き上がる気力さえも持てなかった。


テレビはすでにお正月特番の話題で持ち切りで、つい先日までのクリスマスムードはどこに行ったのだろう、と思ってしまう。


ダラダラと寝たり起きたりを繰り返しながら、気付けば夜を迎えていた。



「…お腹空いたぁ…」


そう呟き、独り寂しくデリバリーでもしようかな、と思って体を起こした刹那、玄関のチャイムが軽やかな音色を響かせた。


トクン、と胸が鳴り、あたしはバタバタと扉へと向かってしまう。



「ジル!」


ジルが、何故かシャンメリー片手に立っていたのだ。


抱き付くより先に笑ってしまい、寒がりな彼を部屋の中へと招き入れた。


手に持つ物には今更だけどX’masと書かれていて、きっとあたしのためなのだろうと思った。



「ご飯時に現れる男だね。」


「今日は俺とお前のクリスマスだ。」


多分あたしは、嬉しかったんだと思う。


拓真とご飯を食べたあの日、彼が通りを女の人と一緒に歩いていたことが気にならないと言えば嘘になるけど、所詮あたしは飼い猫なのだから。


それにきっと、ジルだってあたしがお客と歩いているのを見ているのだろうとも思うし。


だからこそ、お互い様、としか言えないのだ。


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