月影
「…ッカつくー…!」
バンッ、と閉めたロッカーの音が、更衣室に大きく響き渡った。
燻ったモヤモヤとした感情は、最終的に怒りとなってあたしを支配しているのだ。
ヤンチャ少年のようだと思っていたジルの親友は、とにもかくにもいけ好かなくなった。
「レナさーん。
ロッカー壊れちゃいますよー。」
おーい、と葵は、拳を握り締めた状態のあたしに、遠巻きに言葉を投げてきた。
一瞥すると、怖ーい、なんてわざとらしく言われてしまい、やっぱり不貞腐れることしか出来ないのだけれど。
「マジ、どしたの?
てか、レナがキレてる姿とか、初めて見たかもー。」
「…いや、何かもう良いや。
葵がそんな馬鹿みたいな顔しててくれて助かった。」
何となく、葵の馬鹿っぽい顔を前に、怒る気も少しばかり失せ、あたしはため息混じりに視線を宙へと投げた。
「ちょっとね。
色々あって、イラついてただけだよ。」
「へぇ、色々と、ねぇ。」
ふうん、と彼女はグロス片手にそうおどける。
わかってるんだかどうなんだか、葵のそんな言葉を小さく睨んだ。
「…でも、ヤバいようなことじゃないんでしょ?」
答えることが出来ず、あたしは彼女に背を向けてしまう。
ふたりだけで築いている世界の中に居て、何が悪いと言うのだろう。
お互い何の邪魔もしないし、ギンちゃんから助言されるいわれも、ましてや葵に心配されるいわれもない。
少し不安げな声色から逃げるように、何も答えないままに更衣室の扉を閉めた。
バンッ、と閉めたロッカーの音が、更衣室に大きく響き渡った。
燻ったモヤモヤとした感情は、最終的に怒りとなってあたしを支配しているのだ。
ヤンチャ少年のようだと思っていたジルの親友は、とにもかくにもいけ好かなくなった。
「レナさーん。
ロッカー壊れちゃいますよー。」
おーい、と葵は、拳を握り締めた状態のあたしに、遠巻きに言葉を投げてきた。
一瞥すると、怖ーい、なんてわざとらしく言われてしまい、やっぱり不貞腐れることしか出来ないのだけれど。
「マジ、どしたの?
てか、レナがキレてる姿とか、初めて見たかもー。」
「…いや、何かもう良いや。
葵がそんな馬鹿みたいな顔しててくれて助かった。」
何となく、葵の馬鹿っぽい顔を前に、怒る気も少しばかり失せ、あたしはため息混じりに視線を宙へと投げた。
「ちょっとね。
色々あって、イラついてただけだよ。」
「へぇ、色々と、ねぇ。」
ふうん、と彼女はグロス片手にそうおどける。
わかってるんだかどうなんだか、葵のそんな言葉を小さく睨んだ。
「…でも、ヤバいようなことじゃないんでしょ?」
答えることが出来ず、あたしは彼女に背を向けてしまう。
ふたりだけで築いている世界の中に居て、何が悪いと言うのだろう。
お互い何の邪魔もしないし、ギンちゃんから助言されるいわれも、ましてや葵に心配されるいわれもない。
少し不安げな声色から逃げるように、何も答えないままに更衣室の扉を閉めた。