月影
「拓真さぁ。
ホワイトデーにはシャネルのバッグよろしくねぇ。」


「こらこら。
バレンタインにくれたのがチロルチョコ詰め合わせ程度で何億倍だよ。」


「アンタの頭は小学生か。
てか、何億倍とか意味不明なんですけどー。」


拓真とは、たまたまだけど同じ木曜日が休みってこともあり、やっぱりたまたまだけど一緒にご飯を食べる。


相変わらず、酒のつまみはコイツの馬鹿トークだけど、それでもないよりずっと良かった。


それに何より、気になることもあるわけだし。



「ねぇ、それよりさ。
聖夜クン、葵のこと何か言ってる?」


「何も言わないって。
つか、俺らそういうマジな恋愛の話ってあんましないし。」


「あのふたりってさ、マジどうなんの?」


「レナの心配もわかるけど、結局俺ら他人がどうこう言うことじゃないっしょ?」


「…そりゃ、わかってるけどさぁ。」


「でも、ひとつ言えんのは、葵ちゃんの店に来る回数が減ったのは確か、ってこと。」


まぁ、そりゃそうだろう。


脆い関係なんだと漏らしていた葵が、そんな状態で接客してる聖夜クンを見れるとも思わない。



「俺らは所詮、外野だろ?
何かしてやりたいのは俺も同じだけど、掻き回すと余計マズいことになることだってあるんだし。」


拓真の言葉は、いつだってこんな感じ。


正論だし、あたしだって見守ってあげたいけど、でも、それも少し寂しくもある。

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