月影
「それよりレナ、自分の恋愛は?」


「何の話ですかぁ?」


「だから、レナの恋愛の話だよ。」


「聞こえませーん。」


と、笑って受け流しておいた。


だからさ、あたしは会いたいなぁ、って思ってひとりで焦がれてるだけで、そんなの別に、恋愛じゃないんだよ。


葵もだけど、そんな形に縛られてるから苦しくなって、身動き取れなくなるんだよ。


じゃあ苦しいあたしは何だよ、って感じだけど。



「そういう拓真こそさぁ。
あたしばっか誘ってどうすんのよー。」


「じゃあ、どうしようかー?」


「いやーん、エッチー!」


拓真がこうやってあたしの馬鹿に付き合ってくれてるってことは、わかってる。


だからって別に、そこに何かがあるわけでもないし、ある意味コイツとの関係だけが、唯一あたしの中で、清く正しいのかもしれない。



「ホント、レナはただの酔っ払いだよな。」


だって、こうなる前にいつも止めてくれるジルは居ないし、アンタはあたしの気の済むまで飲ませてくれるから。


募るんだよ、何やったって結局は、あの馬鹿男への想い、ってヤツがさぁ。



「…あたしはさぁ、ダメダメ女なんだよ…」


「知ってるよ。」


「…拓真はさぁ、良いヤツだよ…」


「それも知ってる。」


もう、グダグダ。


結局あたしの人生は、身勝手な男達に振り回されてんだ。


だってさ、あたしはやっぱ馬鹿だから。

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