月影
「……え?」


『お前、今すぐ店抜けられるか?』


「…何、どしたの…?」


『霧島シュウ、見つかったかもしれないんだ。』


本人かどうかはわかんねぇけど、と一呼吸置いたジルの台詞。


突然、ずっと放置してたあたしに電話してきて、んで、何言ってんの?



『遺体が、見つかった。』


本当に、何を言っているのだろう。


あたしは何で、こんなにも震えているのだろう。


今までアンタ何やってたのよー、とか笑って言ってやるつもりだったのに、言葉は出ない。



「…シュウが、死んだかも、って…?」


『落ち着け、レナ。』


これが、落ち着ける話なわけないじゃんか。


あたしの答えを聞くより先に、ジルは今から迎えに行くの言葉を残し、電話を切った。


ヘナヘナとその場に崩れ落ちながらあたしは、まとまらない思考をまとめる余裕すらないのだと気付かされてしまう。


ジルに会いたい、と強く思っていた。


でも、こんな風にして会いたいなんて思ってたわけないじゃんか、馬鹿野郎。


ジルが生きてたことに安堵しながら、シュウが死んだかもしれないことに恐怖した。


久々に聞いた声に喜びながら、告げられた凶報に言葉を失くした。


ジルに会いたいから店を抜けたいけれど、シュウの死んだ姿なんか見たくなくて動けずに居る。


助けてよ、誰か。



「…レナ?」

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