テディベアは痛みを知らない
「……ほたる……」

「やっぱ、いるんだな。そいつはさ、きっと今のお前と同じ気持ちだ。それってつまり、お前が傷を負うのは、そいつが痛みを感じるってことじゃないのか」

だれにも、なにも、迷惑なんてかけてない。

私はこれで満足なんだ。

だから、痛いはずの傷も、痛いけれど、痛くなかった。

それは、私の痛みを私以上に感じてくれる親友が、いたから……?

だとしたら私は、自分ばかりか、ほたるまで、傷つけていたということ?

私が、私を、傷つけたばっかりに?

「……で、でも私は……」

今になって初めて。

「こ、これをやめたら、なにも、なにも上手くやれない……」

私は、ポケットにカッターを仕込んでいるのが、怖くなった。

取り出して、握り締める。

よく見ると柄の中の刃は、私の血で少し錆びているように見えた。気のせいかもしれない。

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