春の終わる日
 あの日貰った詩織さんからの手紙。

 結局、貰った日からずっとそのままで中身を見ていなかった。

 いや、見れなかった。

 中に書いてある言葉が怖くてずっと仕舞い込んでいた。

 だけど駆け足で来た春の陽気を肌で感じていると詩織さんがここにいるような気がして…だから今日、手紙を読もうと思ったんだ。



 恐る恐る封を切る。

 白い封筒から仄かにピンクを帯びた便箋が数枚出てきた。


 手紙を広げる。

 頭上にある桜の枝の合間を縫って木漏れ日が便せんに光の水玉を落とした。
< 13 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop