春の終わる日
 ただ当てもなくその日1日を、目の前にある物事をなんとなくこなしていただけなのに詩織さんの目にはとても美しく映っていたようだ。

 僕はただそこに居ただけで詩織さんのように楽しみを持って1日を謳歌したことなんてなかったのに。



 手紙は僕が予想していた通り、恐れていた、…いや悲しいものだった。

 僕は重い心のまま読み終わった便箋を丁寧に封筒に戻し項垂れた。

 俯いて露わになった首筋に日差しが降り注ぐが暖かく感じない。
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