月光狂想曲‐悪魔の花嫁‐



『ただいま戻りました、父上、母上。』


誰もいない城に向かって、グレネディアが声を張り上げた


「え?
お父様とお母様は…?」


『いないよ。
でも、いる。』


哀しそうに答える


「どうして…?」


『聖地を追放された。
まるでアダムとイヴのように。
楽園なんか最初から無いのに…。』


皮肉を込めた笑みが浮かべられる


『でも、父上も母上も嫌いじゃない。
存在は概念で生まれる。
誰かが、貴方がそこにいるといったらその貴方は存在している。』


「…?」


『俺が、この城に父上と母上が住んでいると思うならばそこに2人は【いる】。』





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