月光狂想曲‐悪魔の花嫁‐



残った部屋には静けさが宿る


しかしながら、誰かの足音がその静けさを打ち消した


「…ウァルド。」


『………。』


私はポツリとウァルドの名前を呼んだが、ウァルドは無言のまま私の側に来た


「…ウァルド?」


首を傾げると、ふいに唇に温かいものがゆっくりと触れた


『シルフィア…。』


ウァルドは私を包み込むように抱き締める


『仮でも…仮の彼女でも…、おまえがあいつの側にいるのが耐えられなかった。』


私の耳元で、ポツリポツリと震える声で言葉を選びながらウァルドは言った




< 362 / 391 >

この作品をシェア

pagetop