魔王に忠義を
第二章
ライスト王国。

長い歴史を誇るこの世界で、最初にできた国家。

まだ五種の民が共存していた頃の国家でもある。

今でこそ思想や文化の違いで五つに分かれてしまったこの世界だが、遥か昔は五つの精霊の加護の下、この世界に存在する全ての民が、このライストで生活をしていた。

その名残がライスト王国には残っており、今でも様々な民族がこの国には入り乱れる。

華やかな大通りでは、僅かな薄布で肢体を覆って妖艶な舞いを見せるフーガの踊り子や、百識とまで呼ばれるアイスラの学者の姿も見受けられる。

この場だけ見る限りでは、世界は一つに纏まっているかのような錯覚さえ覚える。

肌の色、瞳の色、文化、信仰、生活様式。

何もかもが異なる異文化の持ち主達が行き交うライストの街。

そんな中を俺も歩く。

道行く人々が全て偽善の皮を被っているように見えるのは、俺の歪んだ性格のせいか。

それともにこやかに笑うこの連中も、俺と意を同じくしているのか。

興味深くもあり、どうでもいい事のようにも思えた。

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