魔王に忠義を
第四章
ライストの先遣隊は、アインにやられた軍人達の手当てや救助で手一杯の様子だった。

とりあえず俺達に構っている暇はないだろう。

「ねぇヴァン」

風の魔法で空中を飛翔しながら、アイシャが俺に語りかける。

「あのシルクハットの男も、秘密結社の…?」

「ああ…顔を合わせるのも名を聞くのも今回が初めてだったがな…構成員達に秘密結社からの指令を通達する役目を持っていた男だ」

それ故に本来は戦闘要員ではない。

にもかかわらずあれだけの戦闘能力を有していた。

これが秘密結社の恐ろしさ。

恐らくは魔王の封印を破る作業を邪魔されぬよう、この先にも足止めの為の構成員が潜伏している筈である。

アインにしてもそうだったが、秘密結社は同じ構成員同士でも面識がない事の方が普通だ。

同じ組織に属していながら、仲間の顔さえ知らぬ。

秘密保持の為である。

俺のように秘密結社から離れた人間がいたとしても、情報が漏洩する事はない。

探っても探っても、見えてくるのは闇ばかり。

それが秘密結社だった。



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